・クロムは色者。
はっきり言ってクロムは色の変化が極めて激しい。
クロムの問いがもし出たなら、間違いなく色を問われるか、反応式を問われるか、何で硫酸酸性にするのかを問われるだろう。
さて、特にクロムの色についてピックアップしたい。
皆さんはクロムイエローを見たことがあるはずだ。
そう、絵の具の黄色の色の事だ。これほどメジャーなのだ。是非この記憶法でクロムをマスターしていただきたい。
その前に一つ注意したい点があるのでよく肝に免じていただきたい。
・遷移元素のイオン(たとえばCr3+)の色は、その金属イオンに水分子が配位した物の色だということ。
是非記憶しておいていただきたい。この手の問い、つまり
・あまりに化学的に常識過ぎて何時の間にか省略されているもの。
に気をつけていただきたいのだ。
どうしてかというと、私の大好きな問い、ここでも何度も紹介したが、硫酸銅5水和物はテトラアクア銅(Ⅱ)イオンと硫酸イオンと一水和物と言うことを知っていないと、東京大学の温度の問題は解けないのだ。
当たり前ゆえに見逃しがちになっている問題、是非洗いざらい見て欲しい。
例をあげるなら2004年度東北大学の電子の問題を解いてみると良いだろう。自分の慢心ぶりにきづくはずだ。
さて、話をクロムの話題に戻そう。
コレは私がクロムを問題を解く過程で見つけた奇妙な共通点をまとめたものである。その共通点とは
・酸、塩基、色の波長、物質の安定性。
である。まあ、論より証拠である、次の表をごらんいただきたい
ニクロム酸イオン (Cr2O7)2- 赤橙色
酸化クロム(Ⅵ) CrO3 暗赤色 酸性酸化物
クロム酸銀 Ag2CrO4 赤褐色
クロム酸カリウム K2CrO4 黄色
クロム酸イオン (CrO4)2- 黄色
クロム酸鉛(Ⅱ) PbCrO4 黄色 (←激出)
クロム酸バリウム BaCrO4 淡黄色
クロム(Ⅲ)イオン Cr3+ 緑色
酸化クロム(Ⅲ) Cr2O3 緑色 クロムグリーン 両性酸化物
水酸化クロム(Ⅲ) Cr(OH)3 灰緑色 両性酸化物 (←激出)
テトラヒドロキソクロム酸イオン [Cr(OH)4]- 緑色
クロム(Ⅱ)イオン Cr2+ 青 不安定
酸化クロム(Ⅱ) CrO 黒 塩基性酸化物
(例外 ヘキサアクアクロム(Ⅲ)イオン 紫)
いかがだろうか。独立していたからこそ、分からなかったがココまで凄まじい関連性があるとは。
・色の波長の長い方が、酸化数が大きく、酸性よりの反応物の姿がうかがえる。
・Cr3+の周辺には緑色で占められており、両性の特性を示す化合物が見られる。
・色の波長が短いほうは、塩基性よりの化合物が見られ、波長が短い青や、黒の色を示す。
というコトが読み取れるだろう。
つまりクロムとは、相手によって自らを変える事が出来る極めて柔軟性に優れた物質。
というわけだ。ナルホド、ダカラ多くの遷移元素を虜に出来るのだろう。
その柔軟性の例を一つあげてみる
2(CrO4)2− + H+(つまり酸) (平衡) (Cr2O7)2− + OH-(つまり塩基)
先ほどの表と比べていただきたい。見事なものだと思わないだろうか?
酸を加えればニクロム酸イオンへ、塩基を加えればクロム酸イオンのほうへ平衡が移動する。
表とぴったり一致する!!
さらに、皆さんは次のような記述を一度は目にしたことがあるはずだ
という記述だ。先ほどの表と比べて欲しい、表の上に行くことは酸の強さがあがるということだったはずだ。というコトは
「もしかして、酸化剤として強くなるんじゃ?」
と予想できないだろうか?そしてその予想はピタリ一致する。
ニクロム酸カリウムは硫酸酸性にすることによって、強力な酸化剤になることができるのだ!!ゆえに次の式がなりたつ
(Cr2O7)2- + 14H+ 6e- → 2(Cr3+) + 7H2O
もうおなじみの式がよりクリアに見えてくるはずだ。
さて銀の項で
「クロム酸イオンは遷移元素を口説くのがとても上手い」
と表現したはずだ。それではここでも、銀の時と同じように表現してゆこう。
まずはじめに紹介するのは受験ではおなじみ、シロ君もきっと元素分析のときに使ったキーワードである
クロム酸鉛(Ⅱ)
を紹介する。
よく見て欲しい、銀の時とは違い、幸せなマンツーマンである!!というコトは、元素の世界での成功は・・・
黄色
であらわせられたはずだ。
同様のことがクロム酸バリウムにもいえる。
しかし、バリウムは遷移元素ではない。ダカラ少し着飾った
淡黄色
となるわけだ!!
銀についてはもう説明済みなので省く。
さらにもう一例、コレも遷移元素ではないが同じように考えられる。
酸化クロム(Ⅱ)
である。
ココで注目して欲しいのは、クロム(Ⅱ)イオン。
表を見て欲しい
不安定
とかいてあるはずだ。ではこんな家庭は上手くいくだろうか?いやいくはずがない!!よって
夢消えた黒
となるわけだ。
では何故、クロム(Ⅱ)イオンは不安定なのか?理由は、クロムの電子は位置を見ていただくと分かるはずだ
そう!!なんとクロムは遷移元素にもかかわらず最外殻電子が
1
なのだ!
さらに、目を配っていただきたい銅も最外殻が
1
のはずだ
この姿では、二個ぶっこ抜くことのむずかしさがわかるだろう。
(ただし銅はそうでもない)
しかし、この結果には君たちには疑問を感じていただきたい。
「何で最外殻が1なのか?」
とである。
GZ高校の皆が見ているならばK村(化学)先生を訪ねなさい。詳しい話が聞けるはずだ。
そうでない諸君。君たちも化学の先生に詳しく説明していただくといいだろう。
ただし、「高校の先生だけでは役ぶそくだ」
という方は、三省堂の[化学]Ⅰ,ⅡBの新研究P26を参照すると良いだろう。理由が少しつかめるはずだ。
さてココでクロムは終わりだがいかがであっただろうか?
是非この知識を頭に入れて、問題演習に励んでいただきたい。
ココまで読んでくれた皆さんの力に成れます様に・・・・
8月27日
指が痙攣したZEKUより